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クロニクル#01

小説
たくみ
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専業時代のお話です

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夜明け前

「麻雀放浪記」の世界観や田山さんに憧れたことはある。
そこに書かれている世界がなんだか非日常な気がして、とても魅力的にみえたのだ。
まさか自分がその世界に一歩踏み出すことになろうとは思ってもいなかったが・・・

ある朝、社長が全社員に会議室に集まるよう号令をかけた。
私が勤めていたのは地元の建設会社で、田舎の会社にしてはそこそこの規模の会社であった。

「・・・みんなすまん。私の力及ばずだ。会社はたたむことになった」

社長がそう言うと、皆は押し黙ってしまった。バブルがはじけてからは厳しい状況が続いていた。
大手ゼネコンは仕事を求め、地方にまで手を伸ばし、うちの会社の仕事も奪っていった。
今までなら頭に立って受けた仕事も、ゼネコンの下請けのような形になり、利益はその分減っていったのだ。
仕事を取るのも競争が激しくなり、受注価格は下落の一歩。私が知る限り会社の負債は8億を超えていた。
そんな状況だったから覚悟はしていたが、いざ社長に告げられるとショックだった。

「みんなには長年頑張ってもらった。差し押さえられる前に皆に今月の給料は払う。
それが私の最後の気持ちだ。こんな事になって本当にすまん・・・」

今更何を言っても会社が続くわけもない。
さしあたり明日の飯にはありつけるのだから、皆は最後となる給料を受け取り、その場を後にし た。

「・・・さて気が重いな」

この後、2人に連絡を入れないといけない。

まず一人目は私が子飼いにしている鳶さんだ。いつも無理を言って仕事を頼んでいた。
今、支払いは約束手形になっているだろうから、最低でも3か月分は現金化されてないだろう。

「もしもし、拓海さん。どうしました?」

声が明るいところをみるとまだ情報は入ってないのだろう。嫌々ながらも事情を説明する。

「・・・マジっすかぁ・・・キツイすね・・・」
「・・・本当にごめん」
「拓海さん責めてもしゃーないすよ。拓海さんは、ほどほどにしとけって言うてくれたやないすか」

私は約手でいくらもらっても現金化できなきゃ意味ないぞ、
他のところの仕事も受けておけと忠告はしていた。
今となっては後の祭りだが・・・

「頼みがあるんすけど・・・今日僕すぐそっち行くんで、だれもいなくなったら、拓海さん会社の鍵開け取ってくれないすか?」

「そ、それは・・・」
「えぇでしょ、今まで僕なんでも言うこと聞いてきましたよ。最後くらいえぇやないですか」
今まで聞いたことのないドスをきかせて彼は言った。

(・・・これは逆らえないな)
ばれたら私も共犯かもな・・・

「大丈夫すよ、拓海さんの名前は出しません」
捕まることも覚悟してるのか、追い詰められ悲壮な覚悟の彼の押しに負けた私は、夜中会社の鍵を開けに行く。

(ごめんな)

そう心の中でつぶやいた言葉は一体誰に謝ったんだろう。
でも違う世界に一歩踏み出した気がしたのはこの瞬間だったのかもしれない。



【この作品はフィクションであり実在の人物、団体とは関係ありません】

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